ら空を仰ぎ降りしきる雪に身を顫《ふる》わせさも悲しそうに吠えるのである。
最初の傷手で権九郎は次第次第に弱って来た。肩からタラタラ滴《したた》る血は雪を紅《くれない》に染めるのであったが夜のこととて黒く見える。立とう立とうと焦心《あせ》っては見たがどうしても足が云うことを聞かない。膝でキリキリ廻りながらわずかに多四郎を防ぐのであった。
「それ行くぞ」
と多四郎は嘲けりながら飛び廻った。彼は余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》たるもので、右から襲い左から飛びかかりグルリと廻って背後から襲う。鼠《ねずみ》を捕えた猫のように最初に致命的の一撃を加え、弱って次第に死ぬのを待ち最後に止《とど》めを差そうとするのだ。
多四郎は莫迦《ばか》にお喋舌《しゃべ》りになった。
「おい権九、いやさ権九郎、何んと俺様は智恵者であろうがな。産まれながら蒲柳《ほりゅう》の質《たち》で力業には向き兼ねる。そこでお前を利用してよ、途方もねえ獲物を盗み出したところで、相棒のお前を殺してしまえば濡れ手で粟の掴み取り、一粒だって他へはやらねえ。……そのまた獲物が予想にも増し小判に直して四万両いや五万両は確かにあろう。へ、こ
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