、女衒《ぜげん》へ掛けて売ったらどうだ」
「へん、なんだ、そんな事か、孔明の智恵も凄《すさま》じいや。そんなことなら迅《と》くより承知よ」
「ナニ承知? ……何故しねえ」
「つまり玉なり[#「なり」に傍点]が異《ちが》うからさ」
「聞きてえものだ、どう異うね?」
「里の女ならそれもよかろう。思い込んだが最後之助、どんな事でもやり通そうという窩人の娘にゃ向かねえね」
「ふん、どうして向かねえんだい?」
「そんな気振りでも見せようものなら、こっちが寝首を掻かれるくらいよ」
「へえ、そんなに凄いんかい」
「何しろ向こうは夢中だからな」
「こら、畜生! 道草を食うな」
 権九郎は自棄《やけ》に怒鳴りながら横へ逸《そ》れる犬を引き締めた。「雪の降ってる冬の夜中だ。道草食うにも草はあるめえ、トットットットッ。走れ走れ!」
 権九郎はむやみと鞭を振る。

         一八

 雪で蔽《おお》われた森や林が蒼い月光に照らされて幽霊のように立っている。橇が走るに従ってだんだんそれが近寄って来る。やがて橇が行き過ぎるとそれもだんだん後《あと》の方へ小さく小さく消えて行く。白無垢《しろむく》を着た険し
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