!」と叱りながら二人はそっちへ近寄って行く。そこに一台の犬橇《いぬぞり》があって人の乗るのを待っていた。
「どっこいしょ」と云いながら、二人は荷物を重そうに橇の上へズシリと置いたが続いて自分達も飛び乗った。権九郎が手綱を取り多四郎が荷物の側へ寄る。ピシッと一鞭くれながら権九郎は振り返った。
「おい多四郎どうしたものだ。せめてお別れの挨拶でもしねえ、振り返って小屋ぐらい見たがよかろう。……ヒューッ」
と口笛で犬をあやす[#「あやす」に傍点]。すると巨大な三頭の犬はグイと頭を下へ垂れ後脚へ力をウンと入れた。とたんにスルリと前へ出る。パッと立つ雪煙り、静かに橇は辷《すべ》り出た。
「へ」
と多四郎は鼻で笑ったが、「俺《おい》らアそんな甘いんじゃねえよ。……部落の女《あま》がどうしたって云うんだい」
「おおおお偉そうに云ってるぜ。へ、どうしたが呆れ返らあ。お前一時はあの女で血眼《ちまなこ》になっていたじゃねえか」
「うん、そうよ、一時はな。……窩人窩人で城下の奴らが鬼のように恐れているその窩人の娘とあっては、ちょっと好奇心《ものずき》も起ころうというものだ。それに容貌《そっぽ》だって相当踏
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