」「ヨイショ」「ドッコイ」
 こういう掛け声が聞こえて来た。それは二人の声であって、重い物でも持っているらしい。しかし姿は見えなかった。と云うのは夜だからで、しかも所は八ヶ嶽の天狗の宮の真後ろの崖で、早春のことであったから氷雪が厚く積もっている。雪は今し方止んだばかりで、雲間を洩れた月光が斜めに崖を照らしている。
 その崖には斜めに高く人工の道が出来ている。半年の月日を費《つい》やして根気よく多四郎が造ったもので、今、その道を上の方から二人の男が下りて来る。
「ヨイショ」「ドッコイ」と忍び音に互いに声を掛け合いながらソロリソロリと下りて来る。
 それは多四郎と権九郎とで、菰《こも》に包んだ太短い物をさも重そうに担《かつ》いでいる。
 すっかり崖を下りきった所で二人はホッと吐息をして、
「もう一息だ、やってしまおうぜ」
「合点」と権九郎が合槌《あいづち》を打つ。
 で、また二人は荷物を担いで、そばに立っている木小屋の前を足音を立てずに通り過ぎ、雪を冠《かぶ》って聳《そび》えている森の方へ歩いて行った。
 間もなく森へはいったが、大きな杉の根方から犬の啼き声が聞こえて来た。
「これ! 畜生
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