の話を聞いた。毒蛇を盗まれたと云っていた。はてな[#「はてな」に傍点]と俺は考えた。考えながら根岸へ行った。と、白粉が引かれてあった。口笛のような音がして、紐《ひも》のようなものが走って来た。そこで初めて感附いたものさ……エロキロスは、茴香剤を嗅がされると、喜びの余り音を立てる、一種歓喜の声なのだ……つまり三人の悪党どもは、森家から内藤家の寝所まで、茴香剤の線を引き、その上をエロキロスを走らせて、若殿を咬ませたのさ……ところで毒蛇エロキロスは、一度|丹砂剤《たんしゃざい》を嗅がされると、発狂をして死んでしまう。それを私《わし》は利用した。で昨夜根岸へ行った。すると白粉が引いてあった。そこで俺はその一所《ひとところ》へ、丹砂剤をうんと振り撒いたものさ。案の定エロキロスは走って来たが、そこまで来ると発狂し、元来た方へ引き返して行った」
「いかにもさようでございました。馳せ返って来た毒蛇は、帯刀様へ食い付きました」葉之助は頷いた。
「帯刀様の刃《やいば》で、紋兵衛も殺されたということだな」
「まずさようでございます。だが本来帯刀様は、私を切ろうとなすったので。それを私が素早く紋兵衛を盾に取っ
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