い日にどうして休んだね?」北山は尚も何気なさそうに訊いた。
 若者はちょっと眉をひそめた。いらざるお世話だと云いたげであった。でも、渋々とこんなことを云った。
「何もね、休みたかあなかったんで……太夫が一人もいないんでね……で、仕方なく休んだんでさあ」

         二六

「ほほう、山男達はいないのかい」失望もし驚きもし、こう北山は大声で云った。「じゃあ山へ帰ったんだね」
「山へ帰ったか里へ行ったか、何んで私が知りますものか」
「で、いつからいないのかな?」
「昨夜《ゆうべ》からでさあ、火事のあった頃から」
「では無断で逃げたんだな」
「逃げたには相違ありませんがね。道具をみんな[#「みんな」に傍点]置いて行ったので、いずれ帰っては来ましょうよ」
「道具?」と北山は眼を光らせた。「で、動物はどうなっている」
「つまりそいつが道具なんで……熊や猿や狼などを、ほったらかし[#「ほったらかし」に傍点]たまま行っちまったんで」
「たしか蛇もいたようだが?」こう探るように北山は訊いた。
「ええおりますよ、幾通りもね」
 北山は懐中へ手を入れた。紙入れを取り出し小粒を摘《つま》み、クルクル
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