て立っていた。二人ながら大声で叫んだ。
「教法の敵! 教法の敵!」
「一人も遁《の》がすな! 一人も遁がすな」
窩人の群は教主を目掛け、大波のように寄せて行った。しかし途中で遮《さえぎ》られた。
水狐族の群が杉右衛門を目掛け、あべこべにドッと押し寄せて行った。これも途中で遮られた。
火事は容易に消えなかった。空は益※[#二の字点、1−2−22]赤くなった。
火事を眺める群集と、格闘を眺める群集とで、往来は人で一杯になった。
死骸がゴロゴロ転がった。流された血で道が辷《すべ》った。その血へ火の光が反射した。
ワーッ、ワーッ、という鬨《とき》の声!
その時見物が叫び出した。
「それお役人のご出張だ!」
御用提灯《ごようぢょうちん》が幾十となく、京橋の方から飛んで来た。八丁堀の同心衆が、岡っ引や下っ引を連れて、この時走って来たのであった。
瞬間に格闘は終りを告げた。
窩人も水狐族も死骸を担ぎ、八方に姿を隠してしまった。
しかし二種族の憎悪と復讐心は、決して終りを告げたのではなかった。明治大正の今日に至っても尚二種族は田舎に都会に、あらゆる複雑の組織の下に、復讐し合ってい
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