人の群は八方へ散った。
 猛獣の群は塔を見上げ、ウオーッ、ウオーッと咆吼《ほうこう》した。
 そうして体を寄せ合った。
 突然一匹の狼が、葉之助の横顔を斜めに掠《かす》め、窓からヒラリと飛び下りた。
 葉之助はハッとした。
「可哀そうに粉微塵《こなみじん》だ」
 いや、粉微塵にはならなかった。体を寄せ合った獣の上へ、狼の体が落下した。蒲団の上へでも落ちたように、狼の体は安全であった。
 すぐに狼は飛び起きた。そうして仲間の狼へ、自分の体をピッタリと付けた。そうして塔上の侶《とも》を呼んだ。ウオーッ、ウオーッと侶を呼んだ。
 と、葉之助の横顔を掠め、次々に狼が窓から飛んだ。
 みんな彼らは安全であった。
 飛び下りるとすぐに起き直り、仲間の体へくっ付いた。そうして誘うようにウオーッと吠えた。
 塔内の狼は一匹残らず、窓から地上へ飛び下りた。
 葉之助とそうして土佐犬ばかりが、塔の中へ残された。
「よし」
 と葉之助は頷いた。
 一匹の土佐犬を抱き抱《かか》え、窓から下へ投げ下ろした。中途で一つもんどり[#「もんどり」に傍点]打ち、キャンと一声叫んだが、犬は微傷さえしなかった。群がり集まっ
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