尚、いくつかの檻があった。土佐犬の檻、猛牛の檻、そうして、どうして手に入れたものか、一つの檻には豹《ひょう》がいた。しかも雌雄の二頭であった。葉之助はその檻を引きあけた。悲鳴が門の屋根から起こった。
熊が門を揺すぶった。狼が屋根へ飛び上がった。喚き声、叫び声、泣き声、怒声! 人獣争闘の大修羅場《おおしゅらば》がこうして、邸内に展開された。形勢は一変したのであった。
読者諸君よ、この争闘を、単に邪教の教会ばかりで演ぜられると思っては間違うであろう。江戸市中一円に向かって、恐ろしい騒動を引き起こしたのである。
いかに次回が血腥《ちなまぐさ》く、いかに素晴らしい大修羅場が次々に行われ演ぜられるか? いよいよ物語は佳境に入った。
一七
奇蹟を行う力があると、葉之助は自分を信ずることが出来た。
彼は猛獣をけしかけ[#「けしかけ」に傍点]た。
「さあ勇敢にあばれ廻れ! 永い間檻へ入れられて、苦しめられたお前達だ、苦しめた奴を苦しめてやれ! 復讐《ふくしゅう》だ! 念晴らしだ!」
猛獣は咆吼《ほうこう》した。
豹は門の屋根へ飛び上がった。
屋根の上から悲鳴が起こ
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