めが殺された今は、戦ったが最後こっち[#「こっち」に傍点]の勝ちだ」
「姥を殺したのは葉之助だ」
「葉之助は俺らの恩人だ」
「だが気の毒にも呪われている」
「永久安穏はないだろう」
「眠い」
 と女の声がした。
 するとみんな[#「みんな」に傍点]黙ってしまった。
 彼らは睡眠《ねむり》にとりかかった。
 やがて鼾《いびき》の声がした。
 木蔭を立ち出で北山は、町の方へ足を向けた。
「ふうむそれでは葉之助は、山男の血統を引いてるのか」
 彼は心で呟いた。
「久田の姥を殺したのは、鏡葉之助の他にはない。……彼らの噂した葉之助は、鏡葉之助に違いない……これを聞いたら葉之助はどんな気持ちになるだろう……明かした方がいいだろうか? 明かさない方がいいだろうか? ……だが多四郎とは何者だろう?」
 上野の方へ足を向けた。
「大胆不敵な葉之助のことだ、素姓の卑しい山男達の、たとえ血統を引いていると聞いても、よもやひどい[#「ひどい」に傍点]失望はしまい。……やはりこれは明かした方がいい……そうだ、今夜も葉之助は、根岸の殿の下屋敷附近を、警戒しているに違いない。行き逢って様子を見ることにしよう」
 
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