から刀を抜こうとした。ただ心があせる[#「あせる」に傍点]ばかりで手が云うことを聞かなかった。
「残念!」と彼は喚くように云った。しかし言葉は出なかった。ただそう云ったと思ったばかりで、その実言葉は舌の先からちょっとも外へは出なかった。
 彼は前ノメリに倒れてしまった。
 しかしそれでも意識はあった。
 それから起こった出来事を、彼はぼんやり[#「ぼんやり」に傍点]覚えていた。
 ……まず二、三人の男の手が、彼を宙へ舁《か》き上げた。……縁から庭へ下ろされたらしい。……穴を掘るような音がした。……と、提灯《ちょうちん》の灯が見えた。……茴香《ういきょう》畑が見えて来た。……花が空を向いていた。……一人の男が穴を掘っていた。……大きな穴の口が見えた。……彼はその中へ入れられた。……バラバラと土が落ちて来た。……おお彼は埋められるのであった。……もう何んにも見えなかった。サーッと土が落ちて来た。……顔の上へも胸の上へも、手へも足へも土が溜った。……次第に重さを感じて来た。……そうして次第に呼吸《いき》苦しくなった。……「俺は死ぬのだ! 俺は死ぬのだ!」葉之助は穴の中で、観念しながら呟いた。
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