り立ての坊主頭の被布《ひふ》を纏《まと》った肥大漢で、年は五十を過ぎているらしく、銅色をした大きな顔は膏切《あぶらぎ》ってテカテカ光っている。
「愚老、大槻玄卿でござる」こう云って坐って一礼したが、傲岸不遜《ごうがんふそん》の人間と見え、床の間を背にして坐ったものである。
「家人をお助けくだされた由《よし》、あれは小間使いとはいうものの、愚妻の縁辺でござってな、血筋の通った親類|端《はじ》、ようお助けくだされた。玄卿お礼を申しますじゃ」それでも一通りの礼は云った。
「拙者は鏡葉之助、内藤駿河守の家臣でござるが。ナニ助けたと申し条、ただちょっと通りかかったまで、そのご挨拶では痛み入る」葉之助も傲然と云った。「こんな坊主に負けるものか!」こういう腹があったからである。
「ほほう、内藤家の鏡氏、いやそれはご名門だ。お噂は兼々《かねがね》存じております。実は愚老は内藤様ご舎弟、森帯刀様へはお出入り致し、ご恩顧《おんこ》を蒙《こうむ》っておりますもの、これはこれはさようでござったか」
玄卿も相手が葉之助と聞いて、にわかに慇懃《いんぎん》な態度となった。
その時小間使いが現われたが、それは別の
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