《は》み出して造られているのであった。
山吹は窩人族の乙女としてはほとんど類なく美しかった。やはり頭領の一人娘だけに衣裳などでも他の娘などより立派な物を着ているので自然引っ立ちもするのであろうが、下界高島の城下における立派な武士の令嬢と云っても充分通る容姿《ようす》であった。
その美しい山吹が秋陽に半顔を照らしながらシクシク泣いているのであるから、ちょっと形容出来がたいほど可愛《かわい》らしく見えるのであった。
その時、手近かの林の中から雉笛《きじぶえ》の音が聞こえて来たが、のっそり[#「のっそり」に傍点]草を分けて出て来たのは彼女の弟の牛丸であったが年はおおかた十四ぐらいでもあろうか、ひょいと[#「ひょいと」に傍点]家の前まで来ると、姉の様子を覗《のぞ》き込んだ。
「うわア、姉さん泣いてらあ。こいつアほんとに面白いや」
林の中で捕ったのでもあろう雉を一羽|提《さ》げていたが、それを土間の方へ抛《ほう》り出すと縁側へどん[#「どん」に傍点]と腰を掛け、
「今ね、姉さん、多四郎さんがね、姉さんを訪ねてここへ来るよ」
「え、まあ本当! 多四郎さんが?」
「林の中から坂路の方を見たら
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