どうで知れずには済まされぬ。それより私《わし》は町方に住んで、自由に活動するつもりだ。ところでお前さんに頼みがある。ご迷惑でも今夜から、下屋敷の方へ出張ってくだされ。そうして例の白粉がもしも地面に撒いてあったら、用捨なく足で蹴散らしてくだされ。これは非常に大切なことだ」
「かしこまりましてござります。毎晩出張ることに致しましょう」
葉之助は意気込んで引受けた。
二
北山と一学とは人目を憚《はばか》り、駕籠でこっそり帰った。そうしてどこへ行ったものか、しばらく消息が解らなかった。
さてここで物語は少しく別の方へ移らなければならない。
ここは寂しい宇田川町、夜がしんしん[#「しんしん」に傍点]と更けていた。
源介という駕籠舁《かごか》きが、いずれ濁酒《どぶろく》でも飲んだのであろう、秋だというのに下帯一つ、いいご機嫌で歩いていた。
「金は天下の廻りもの、今日はなくても明日はある。アーコリャコリャ。アコリャコリャ」
こんなことを云いながら歩いていた。
と、手近の行手から女の悲鳴が聞こえて来た。
「へへへ、どいつかやってやがるな。アレーと来りゃこっちのもの
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