の罪は消えた。父の後を追うことはならぬ。決してお前は死ぬことはならぬ。さて私は死に臨んでお前の身上《みのうえ》にかかっているある秘密の片鱗を示そう。お前の実父は飯田の家中南条右近とはなっているが、しかし誠はそうではない。お前の実の両親は全然別にある筈だ。とは云えそれが何者であるかはこの私さえ知らないのである。ただし南条右近の子として鏡家へ養子に来たについては、来ただけの理由はある。また立派な経路もある。そうしてそれを知っている者は、私の親友、殿の客分|天野北山《あまのほくざん》一人だけである。就《おもむ》いて訊ねるもよいだろう。私は今死を急ぐ、それについて語ることは出来ない。下略」
これが遺書の大意であった。
で、ある日葉之助は北山方を訪れた。
一通り遺書を黙読すると北山は静かに眼をとじた。
「弓之進殿は悪いことを書いた」やがて北山はこう云った。
「それはまた何故でございましょう?」葉之助は訝《いぶか》しそうに訊いた。
「何故と云ってそうではないか。しかし……」
と云って北山はまたそこで考え込んだが、
「そこがあの仁のよいところかも知れぬ。いつまでもそなたを瞞《だま》して置くこ
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