すものは、初恋の人の心である。それを彼は抑えられた。
 鏡葉之助はその時以来|怏々《おうおう》として楽しまなかった。自然心が欝《うっ》せざるを得ない。
 欝した心を欝しさせたままいつまでも放抛《うっちゃ》って置く時は、おおかたの人は狂暴となる。
 葉之助の心が日一日、荒々しいものに変わって行ったのは、止むを得ないことである。彼は時に幻覚を見た。また往々「変な声」を聞いた。
「永久安穏はあるまいぞよ!」その変な声はどこからともなくこう彼に呼び掛けた。気味の悪い声であった。主のない声であった。
 そうしてそれは怨恨《うらみ》に充ちた哀切|凄愴《せいそう》たる声でもあった。
 そうして彼はその声に聞き覚えあるような気持ちがした。
 この言葉に嘘はなかった。実際彼は日一日と心に不安を覚えるようになった。心の片隅に小鬼でもいて、それが鋭い爪の先で彼の心を引っ掻くかのような、いても立ってもいられないような変な焦燥《しょうそう》を覚えるのであった。事実彼の心からいつか安穏は取り去られていた。
「どうしたのだろう? 不思議な事だ」
 彼にとっても、この事実は不思議と云わざるを得なかった。
 で、意志の
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