ょう?」
「うん、そうしてご馳走《ちそう》するか」
「それがよろしいかと存じます」
「なるほどこれはよいかもしれない」
 大鳥井紋兵衛と娘お露とは、ここでようやく相談を極《き》めた。
 翌日紋兵衛は袴羽織《はかまはおり》で、自身鏡家へ出掛けて行った。
 帰国以来葉之助は、いろいろの人から招待されて、もう馳走には飽き飽きしていた。で、紋兵衛に招かれても心中大して嬉しくもなかった。と云って断われば角が立つ。そこでともかくも応ずることにした。もっとも娘のお露に対しては淡々《あわあわ》しい恋を感じていた。
「あの娘は美しい。そうして大変|初々《ういうい》しい。父親とは似も似つかぬ。会って話したら楽しいだろう」こういう気持ちも働いていた。
 中一日日を置いて彼は大鳥井家へ出掛けて行った。
 心をこめた種々の馳走はやはり彼には嬉しかった。誠心《まごころ》のこもった主人の態度や愛嬌《あいきょう》溢れる娘の歓待《もてなし》は、彼の心を楽しいものにした。殊にお露が機会《おり》あるごとに彼へ示す恋の眼使いは、彼の心を陶然《とうぜん》とさせた。さすがは豪家のことであって書画や骨董《こっとう》や刀剣類には、素
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