《たど》りついた所は、いわゆる昔の笹の平、すなわち窩人《かじん》の部落であって、諸所に彼らの住家があったが、人影は一つも見られなかった。
 見られないのが当然である。十数年前に窩人達は漂泊《さすらい》の旅へ上ったのだから。
 しかしもちろん葉之助にはそんな消息は解っていない。で、窩人の廃墟ばかりあって、窩人その者のいないということが、少なからず彼を失望させた。
「だがさっきの呼び声は決して自分の空耳《あだみみ》ではない。確かに人間の呼び声であった。その人間はどこにいるのであろう?」
 そこで彼は何より先にその人間を探すことにした。
 一軒一軒根気よくかつては窩人の住家であり、今は狐狸の巣となっている、窟《いわや》作りの小屋小屋を丁寧に彼は探したが、人間の姿は見られなかった。
「さては空耳《あだみみ》であったのかしら?」
 ようやく疑わしくなった時、またもや同じ呼び声がどこからともなく聞こえて来た。
「いらっしゃい、いらっしゃい、いらっしゃい!」と。
 声は山の方からやって来る。
 で葉之助は元気付き声のする方へ走って行った。荒野を上の方へ越した時、丘の上に森があり、森の中に神殿があり、
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