いか。鏡葉之助は鏡葉之助だ。他の何者でもないではないか。
 それとも葉之助と「鼓ヶ洞」とは何か関係があるのであろうか?
「これは不思議だ」と葉之助は声に出して呟いた。「遠い遠い遠い昔に、私《わし》は何んだかこの小屋に住んでいたような気持ちがする。……しかしそんなことのありようはない!」忽然、この時絶壁の上から、人の呼び声が聞こえて来た。
「おいでなさい! おいでなさい! おいでなさい!」慈愛に充ちた声である。

         二五

「おいでなさい、おいでなさい、おいでなさい!」
 慈愛に溢れた呼び声がまた山の上から聞こえて来た。
 鏡葉之助はそれを聞くと何んとも云われない懐かしの情が油然《ゆうぜん》と心へ湧き起こった。
「誰かが俺を呼んでいる。行って見よう、行って見よう」
 忙しく四辺《あたり》を見廻した。正面に当たって崖がある。崖には道が付いている。その道は山上へ通っている。
 で葉之助はその道から山の上へ行くことにした。苔《こけ》に蔽《おお》われ木の葉に埋もれ、歩き悪《にく》い道ではあったけれど、葉之助にとっては苦にならなかった。で、ズンズン登って行く。
 こうしてようやく辿
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