、ヒューと鳴り渡る。それが睡気《ねむたげ》な調和をなし、月夜を通して響き渡る。
静かに老婆は立ち上がった。それから両手を差し出した。それを上下へ上げ下げする。何かを招いているらしい。
と、城下の方角から、一つの黒点があらわれたが、それが風のように走って来る。魔法使いの老婆の手が遥かに犠牲《いけにえ》を呼んだのでもあろう。チン、チン、チン、カン、カン、カン、ヒュー、ヒューと音楽の音は次第次第に調子を早め、上げ下げをする老婆の手がそれに連れて速くなる。黒点は次第に近寄って来る。点が棒になり棒が人形となり、月の光を全身に浴びた一人の若い侍の姿が、やがて眼前へ現われた。諏訪家の若殿頼正である。
三人の女と老婆とは、にわかにスーッと立ち上がった。そうして音楽を奏しながら階段を悠々と昇り出した。やはり老婆は左右の手を上へ下へと上げ下げする。やがて屋内へ姿を消した。
頼正の眼は見開かれている。凝然《じっ》と前方へ注がれている。しかし眠っているらしい。ただ足ばかりが機械的に動く。階段の前へ来たかと思うともう階段を昇っている。あたかも物に引かれるように、躯《からだ》を斜めに傾《かし》げたかと思う
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