−2−22]|泰然《たいぜん》と構え、姿勢に揺るぎもなく、三の矢四の矢五の矢まで、呼吸《いき》も吐けない素早さで弦音高く射放したが、旗はついに出なかった。
 ガッチリ弓を棚に掛け、袴《はかま》両袖《りょうそで》をポンポンと払うと、静かに葉之助は射場を離れ、端然と殿の前へ手を支《つか》えた。
「未熟の弓勢《ゆんぜい》お目にかけお恥ずかしゅう存じます」
「うむ」
 と云ったが駿河守は牀几《しょうぎ》に掛けたまま動こうともしない。何やら考えているらしい。
「源兵衛、源兵衛」
 と急に呼んだ。弓道師範の佐々木源兵衛小腰を屈《かが》めて走って来た。
「的をここへ持って来い」
「はっ」と云うと源兵衛は、扇を上げて差し招いた。旗の役の小侍は、それと見ると的を捧げ、矢場を縦に走って来たが、謹《つつし》んで的を源兵衛へ渡す。源兵衛から殿へ奉《たてまつ》る。
 的を眺めた駿河守は、
「おお」と思わず声を洩らした。「どうだ源兵衛これを見い!」
「はっ」と云って差し覗くと、思わずこれも「うむ」と唸った。矢は五本ながら中《あた》ってはいないが、しかしその矢は五本ながら同じ間隔と深さとをもって的の縁《へり》を擦《
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