」
と云ったが葉之助、こう云われては断わることは出来ない。未熟と申して尻込みすれば家門の恥辱、身の不面目となる。白痴を気取ってはいられなくなった。
「不束《ふつつか》ながらご諚《じょう》なれば一矢仕るでござりましょう」
謹んでお受けすると列を離れ、ツツーと設けの座に進んだ。屹《きっ》と金的を睨んだものである。
「葉之助殿おやりなさるかな。貴殿何流をお習いかな」
佐々木源兵衛は莞爾《にこやか》に訊いた。
「はい、竹林派をほんの少々」
云いながら無造作に弓を握る。
九
これを見ると若侍達は互いにヒソヒソ囁《ささや》き出した。
「行灯殿が弓を射るそうな。はてどこへぶち[#「ぶち」に傍点]こむやら」「土壇《どたん》を飛び越し馬場の方へでも、ぶっ[#「ぶっ」に傍点]飛ばすことでござりましょう」
「それはよけれど弾《は》ね返って座席へでも落ちたら難儀でござるな」
「いやいやそうばかりも云われませぬよ」
中には贔屓《ひいき》をする者もある。「松崎道場では石渡殿を、手こずらせたという事です」
「いやそれも怪我勝ちだそうで」
「では今度ももしかすると[#「もしかすると」
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