し悪《にく》い」
「落とさぬよう致したいもので」
「そこだ」
 と弓之進は膝を打った。
「よく気が付いた。そうなくてはならぬ。ついては今後は白痴《ばか》になれ」
「は?」
 と云って葉之助は思わずその眼を見張ったものである。
「今後は白痴になりますよう」
 弓之進は再びこう云うとじっ[#「じっ」に傍点]と葉之助を見守った。
「どうだ葉之助、まだ解らぬかな?」
「お言葉は解っておりますが……」
「うむ、その意味が解らぬそうな。それでは一つ例を引こう。武士の亀鑑《きかん》大石良雄は昼行灯《ひるあんどん》であったそうな」
「お父上! ようやく解りました!」
「おお解ったか。それは重畳《ちょうじょう》」
「私昼行灯になりましょう」
「ハッハハハ、昼行灯になれよ」
「きっとなってお目にかけます」
「昼の行灯は馬鹿気たもの、人は笑っても憎みはしない」
「御意《ぎょい》の通りにござります」
「我が家は内藤家の二番家老、門地高ければ憎まれ易《やす》い。お前の性質は鋭ど過ぎ、これまた敵を作り易い。それを避けるには昼行灯に限る」
「昼行灯に限ります」
「お、白痴《ばか》になれよ白痴になれよ」
 その時襖が
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