八ヶ嶽の魔神
国枝史郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)乙女《おとめ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)お姉様|灯火《あかり》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「女+予」、第3水準1−15−77]
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   邪宗縁起

         一

 十四の乙女《おとめ》久田姫は古い物語を読んでいる。
(……そは許婚《いいなずけ》ある若き女子《おなご》のいとも恐ろしき罪なりけり……)
「姫やどうぞ読まないでおくれ。妾《わたし》聞きたくはないのだよ」
「いいえお姉様お聞き遊ばせよ。これからが面白いのでございますもの。――許婚のある佐久良姫《さくらひめ》がその許婚を恐ろしいとも思わず恋しい恋しい情男《おとこ》のもとへ忍んで行くところでございますもの」
「姫やどうぞ読まないでおくれ。妾は聞きたくはないのだよ」
「お姉様それでは止めましょうね。……」
 姫は静かに書《ふみ》を伏せた。
「ああ、もう今日も日が暮れる。お部屋が大変暗くな
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