「面ァ見てくれ、雲切仁左衛門!」
「おっ!」
 と云うと睨み上げた。
「や、貴様は大岡越前の……」
「四天王の随一人……」
「ううむ、石子伴作だったか!」
「胆が潰れたか、笑止だなあ!」
「だが大凧を空へ上げ、天主の鯱を狙ったは?」
「何んの鯱を狙うものか、只鱗を調べた迄よ」
「ナニ、鱗を? 何んのために?」
「ついでに云って聞かせてやろう。……大納言様は大腹中、金銀を湯水にお使いなさる。由緒ある金の鯱の、鱗をさえもお剥がしになりお使いなさるという噂、江戸へ聞えて大評判、そこで実否を確かめようと、主人の命で名古屋へ下り、いろいろつまらねえ[#「つまらねえ」に傍点]細工をして、この城内へ入り込んだ迄さアッハッハッ、これで解ったろう!」
 石子伴作は大きく笑った。

 大岡越前守と雲切とが、よく似た容貌を持っていたことは、「緑林黒白」という盗賊篇に、簡単ではあるが記されてある。それを利用して雲切が、越前守の名を騙り、名古屋へこっそり這入り込み、部下の一人を花作りとし、城中の人々を無気力にするため、まず阿片を進めて置いて、それから城中へ堂々と入り、金蔵を破ろうとしたことも、同く、「緑林黒
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