嚇すつもりだということが、ちゃあんと透視光に写っている。……え、なんですって、吉利支丹ですって? 冗談云っちゃァ不可ません。そんなものじゃァございませんよ。唐土渡来の建築術で。……ヘッヘッヘッヘッ切りましたね。プッツリ鯉口を切りましたね。そんな事にゃァ驚かねえ。余人は知らず此わっち[#「わっち」に傍点]にゃァ殿様の心は解っていやす。よしんばわっち[#「わっち」に傍点]に解らずとも、透視光の面に書いてある。大丈夫だよ、抜きゃァしねえ。……お止しなせえましそんな真似は。……が、待てよ、こいつァ不思議だ! 真黒の物が写って見える。おっ、こいつァ殿様の心だ! ううむ偖は殿様には。……アッハハハ心配無用必ず素破抜きゃァしませんからね。ははあ成程そうだったのか。そういう心があったので。それでわっち[#「わっち」に傍点]を嚇したんですね。大丈夫でげす大丈夫でげす。決して云いふらしゃァしませんよ。……尤もこいつ[#「こいつ」に傍点]を云いふらしたひにゃァ、日本国中大騒動だ。煙硝蔵が開かれる。鎧甲が櫃から出る。旗指物が空に舞う。矢弾がヒューヒュー空を飛ぶ。ワーッ、ワーッと鬨の声だ。江戸と名古屋と戦争だ!
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