#「じっ」に傍点]と香具師へ眼を付けた。「お前の名は何というな?」
「へい、多兵衛と申します」
「おお模型かな、その包は?」
「へい、さようでございます」
「ひとつそいつ[#「そいつ」に傍点]を見せてくれ」
「ようがすとも、お見せしましょう。見せるつもりで持って来たんで」
取り出したのは鳩の模型、畳へ置くと懐中から、一掴みの豆を取り出した。
「観音様の使者め。鳩が豆を拾います」云い乍ら颯と豆を蒔いた。と鳩がピョンピョン飛んで、後から後から豆を拾った。
「面白く無いな。子供瞞しだ。もっと面白い模型は無いか」
「ようがす、それじゃァ〈透視光〉だ」こう云い乍ら取り出したのは格恰の機械であった。まず形は長方形、内部は黒く塗られていた。一方の口は硝子張り、反対の口は板で張られ、中央に小さい穴があった。ところで外見からは解らなかったが、角筒の内部の一箇所に薄い板の仕切りがあり、その真中に鳥の羽根を張った、四角な穴が穿たれていた。
「唐土発明の透視光、一切人間の胎内が解る……おお九兵衛さん手をお出しな。……おっと宜しい夫れで結構。あっ、不可ねえ、障子を開けたり。お手をお日様に向けるんだ。……さて殿
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