]、ふたたび香具師を訪れた。
「へえ然うですかえ、感心だなあ。流石はご三家の筆頭だ。どうもお心の広いことだ。ようがす、夫れじゃァ参りやしょう」有り合う布呂敷へ模型を包んだ。「こいつあ殿様へのお土産だ。喜んで下さるに違えねえ。只の模型じゃァ無えんだからな」ヨイショと背中へ引担いだ。駕籠へ乗れと進めても、いっかな香具師は乗ろうとしない。表門からは通せない裏門へ廻われと九兵衛が云うと、香具師は不機嫌な顔をした。
「不浄な人間じゃァあるめえし、なんで裏門から通るんですい。面倒臭えなあ俺は帰る」
 とうとうこんなことを云い出して了った。そこで玄関から上ることにした。広大華麗な城内の様子も、一向香具師には感じないと見え、平気でノシノシ歩いて行った。通された部屋は孔雀の間で、襖から欄間から衝立から、孔雀の絵模様で飾られていた。
 出て来たのは宗春であった。
「おお香具師か、よく参った」宗春は気軽に声を掛けた[#「。」なしはママ]「胡座を掻け、寛ぐがいい」そうして自分も胡座を掻いた。
「よいお天気でございます」香具師はペコンと辞儀をしたが「何かご用がござんすそうで?」
「うん」と云ったが宗春は、じっ[
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