ているんだからな。だからよ、此奴を買って行って、尺に合わせて計ってみるがいい。そうして屋敷でも建ててえ時には、そっくり此奴を参考にして、トンカントンカン建てるがいい。大工を頼む必要はねえ。そうだ板っ切れの削り方と、釘の打ちようさえ知っていたら、自分で結構建てることが出来る。ところで種類なら幾通りでもある。九尺二間の裏店から、百万石の大名衆の、下屋敷まで出来てるのさ。尤も城の模型は無え。こいつは鳥渡物騒だからな。ウカウカそんな物を拵えようものなら、謀叛人に見られねえものでもねえ。おお恐え逆磔刑《さかはりつけ》だ! が、併しお大名衆から、特にご用を仰せ付かるなら、こいつは別物だ遠慮はしねえ、城の模型だって造ってみせる。山本勘介も武田信玄も、太田道灌も太閤様も、俺から云わせりゃ甘えものさ。昔から名ある築城師、そんなもなあ屁の河童だ! だがマア自慢はこれくらいとして、さて夫れでは実物に就いて、説教することにしようかな。……最初は是だ、この模型だ! 五行循環吉祥之屋敷!」
こう云い乍らその香具師は、地面に置いた風呂敷包から、屋敷の模型を取り出した。
今日の張ボテ式、子供瞞しの品ではあったが、
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