ているなあ」
「莫大な費用がかかっているらしい」
賊どもは互いに呟いている。
蒼白くひろがった月光の中に、尖塔を持ち円家根《まるやね》を持ち、矗々《すくすく》と聳えている南蛮寺の姿は、異国的であって神々しい。
夜が相当深いので、往来を通る人もなく、夜警にたずさわる検断所の武士も、他の方面でも巡っているのであろう。ここら辺りには見えなかった。
「噂によれば南蛮寺には、大変もない値打ちのあるものが、貯えられているということだが、どうぞして内《なか》へ忍び込み、そいつをこっちへ奪いたいものだ」
こう考えたは一党の頭、すなわち星影左門であったが、手下の者を見廻した。
「誰でもよいから囲《かこい》を乗り越し、内の様子を探って来い」
つまり命令を下したのである。
いつもは我武紗羅《がむしゃら》で命知らずで、どんな処へでも出かけて行く――そういう手下ではあったけれど、今度ばかりはどうしたものか、左門の云い付けを聞こうともしない。顔を見合わせて黙っている。
それには理由があるのである。
始めて眼にした南蛮寺、構造《つくり》がまるで異っている。うかうか内へ入った処で、内の様子を探ることが
前へ
次へ
全125ページ中113ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング