「入会式」のことや「誓詞」のことや「諸律法」のことや「十禁」の事や「十刑」の事や「会員証」のことや「造字《つくりじ》」のことや「隠語」のことや「符牒」のことや「事業」の事や「海外における活動」のことについても、かなり詳しく記されてあった。
しかし、将軍家紛失に関しての、暗示らしいものは記されてなかった。
とまれ非常な大結社で、支那の政治にも戦争にも、また外交の方面にも、偉大な潜勢力を持っていることが、記録によって窺《うかが》われた。のみならず印度《インド》や南洋にある、百万近くの支那人のうち、過半以上は会員として、働いていることも記されてあった。
それと同時に会員のうちには、不良分子も潜在していて、悪いことをしているということも、支那人以外にも会員があって、気脈を通じているということも、相当詳しく記されてあった。
京師殿と甲斐守
「恐らく今度の事件なるものは、日本における会員の、不良分子の所業《しわざ》であろうが、どういう径路で将軍家をどうして奪ったかわからない。どこに将軍家を隠しているか、それとも無慚に弑《しい》したか、これでは一向見当が付かない。……一人でもよい
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