タさせた。
「意気地《いくじ》がないねえ、どうしたんだよ。やわい[#「やわい」に傍点][#「どうしたんだよ。やわい[#「やわい」に傍点]」は底本では「どうしたんだよ。やわ[#「。やわ」に傍点]い]じゃあないかえ、お前さんの体は。ホッ、ホッ、ホッ、ホッ、手頼《たよ》りないねえ」源太の首へ巻いた手を、グーッと胸へ引き寄せた。
「む――」と源太は唸ったが、ビリビリと手足を痙攣《けいれん》させた。と、グンニャリと首を垂れた。
手を放し、足を上げ、ポンと娘は源太を蹴った。一団の火焔の燃え立ったのは、脛に纏った緋の蹴出《けだ》しだ。
「化物《ばけもの》だあァ!」と叫ぶ声がした。石地蔵の六が叫んだのであった。
息杖を握ると飛び込んで来た。と、娘は入り身になり、六蔵の右腕をひっ[#「ひっ」に傍点]掴んだ。と、カラリと息杖が落ちた。「ワ――ッ」と六蔵は悲鳴を上げた。とたんにドンと地響きがした。六蔵の体が地の上へ潰された蟇《がま》のようにヘタバった。寂然《しん》と後は静かであった。常夜燈の灯がまばたい[#「まばたい」に傍点]た。ギー、ギーと櫓を漕ぐ音が、河の方から聞こえて来た。
怪しの家怪
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