相の持主であった。下っ引の手合も今日はいず、一人いい気持に酔っていた。
朝風呂丹前長火鉢、これがこの手合の理想である。しかし岡っ引の手あて[#「あて」に傍点]といえば、一月一分か一分二朱であった。それでは小使にも足りなかった。その上岡っ引は部下として、下っ引を使わなければならなかった。その手あて[#「あて」に傍点]はどこからも出ない。自分が出さなければならなかった。そこで勢い岡っ引は他に副業を求めるか、ないしは地道の町人をいたぶり[#「いたぶり」に傍点]、賄賂《わいろ》を取らなければ食って行けなかった。
ところで友蔵には副業がなかった。そこで町人を嚇《おど》しては、収賄《しゅうわい》をして生活《くらし》ていた。
「兄さん」とお花は茶の間へ入ると、風呂敷包をサラリと解いた。「見て貰いたいものがありますのよ。この手箱なの、どう思って?」
伊丹屋《いたみや》のお錦が「爺つあん」から貰い、小堀義哉に預けた所の、例の手箱を取り上げた。
「変哲《へんてつ》もねえ杉の箱じゃあねえか、これが一体どうしたんだい?」友蔵は手箱を取り上げた。
「何でもないのよ、見掛けはね。でもちょっと変なのよ」
お花
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