軍職に就かれたそうだ。そのお気に入りの柳沢侯[#「侯」は底本では「候」]、最初は微祿であられた所が、この壺を借りたその日から、トントン拍子に出世されたそうだ。……で、この壺はそれ以来、甲府勤番御支配頭の、保管に嘱《しょく》していたものだそうな。そうして甲府城の土蔵の奥に大切に仕舞《しま》って置かれたんだそうな。……そいつを「爺《とっ》つあん」が盗み出したのよ」
「へえ「爺つあん」? 葉村《はむら》のかえ?」
「うん、そうさ、あの葉村のな。……今こそ玉乗《たまのり》の親方か何かで、真面目に暮らしているけれど、昔はどうして大悪党よ、俺ら以上の悪党だったのさ」
「だがおかしいね、その「爺つあん」が、どうして手に入れた宝壺を、釜無の岸へなんか埋めたんだろう?」
「そいつア俺にも解らねえ」
「それに本当にその壺が、そんなに大した福の神なら、あの葉村の「爺つあん」も、もっと出世していいはずだが、たいして出世もしねえようだね」
「うん、そう云やアその通りだが、そこには曰《いわく》があるんだろう。豚に真珠という格言もあらあ、せっかくの宝も持手が悪いと、ねっから役に立たねえものさ」
「今度は親方が手に入
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