る。宙に浮く女駕籠。サッサッサッと足並を揃え、深夜の町を掠めるがように、北を指して消えて行く。
記名《ないれ》の傘《からかさ》が死骸の側《そば》に、忘れてあったという所から、浪人藤掛道十郎が下手人として認められ、牢問い拷問の劇《はげ》しさに、牢死したのはその後の事で、それについても物語があり、不思議な花魁泥棒が、十兵衛の娘お種を助け、長庵の悪事を剖《あば》くという、義血侠血の物語《はなし》もあるが、後日を待って語ることとしよう。
とまれ強悪の村井長庵がものした[#「ものした」に傍点]金を又ものされ[#「ものされ」に傍点]、手出しもならず口を開き、茫然《ぼんやり》立ったという所に、この物語の興味はあろうか。
底本:「国枝史郎伝奇全集 巻六」未知谷
1993(平成5)年9月30日初版発行
初出:「ポケット」
1925(大正14)年6月
※「平河町」と「平川町」の混在は底本通りにしました。
入力:阿和泉拓
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年9月10日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.g
前へ
次へ
全19ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング