れば搦み落とす、翩翻《へんぽん》自在の構えである。星を刻むような鋒止先《きっさき》、チカチカチカチカと青光る。居付かぬように動かすのである。ブ――ッと剣気そこから湧き、暗中に虹でも吹きそうである。

        三

 だが南部集五郎、こいつも決して只者ではなかった。東軍流ではかなりの手利《てき》き、同じく飛び退くとヌッと延《の》し、抜き持った太刀|柄《づか》気海へ引き付け、両肘を縮めて構え込んだが、すなわち尋常の中段である。
「なるほど」と呟いたは小一郎で、「かなり立派な腕前だな。だがこの俺の敵ではない。よし」と云うと揶揄し出した。「さあ南部氏、かかってござれ! 立っているばかりが能ではない。お揮いなされ、そのだんびら[#「だんびら」に傍点]を! ちょうど星空だ光りましょうぞ! 廻わり込みなされ、右の方へ! すると拙者は左へ廻わる。と、ご両人ぶつかり[#「ぶつかり」に傍点]合う。そこでチャリ――ンと一合の太刀! ナーニ二合とは合わせませんよ、一合でちゃ[#「ちゃ」に傍点]アんと片が付く。もちろん貴殿が負けるのさ。それ石卵は敵しがたし! 唐人も時にはうまいことを云う。石と卵とぶつか
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