れだ、武器の手入れだ! 槍を磨け、刀を磨け、鉄砲の筒を掃除しろ。……一手は森林の裾へ行け。そこへ幕営をつくるがいい。一手は森林の底へ行け。そこへ地雷を伏せるがいい。……火薬袋に注意しろ。点火の手筈の狂わぬよう。……谷川へは橋をかけるがいい。……物見だ物見だ、物見に行け!」
指揮しているのは、隅田のご前で、昆虫館の建物の前へ、牀几《しょうぎ》を出して腰かけている。
人々が八方へ駈け巡る。伝令が四方へ飛んで行く。遠くで鉄砲の音がする。恐らく試射をやっているのであろう。と、ゴーッという音がした。水の流れる音である。槓杆《こうかん》を動かしたに相違ない。そこで湛えられた湖水の水が、森林をひらいて流れたのであろう。
と、麓の方角から、一団の人数が上って来た。醜い不具者の群である。ずっと以前に昆虫館にいて、閉ざされると共に立ち去ったのだが、昆虫館の大事を聞き、今や集まって来たのである。
ひっそりと寂しかった昆虫館は、こうして活気を呈したが、むしろ活気というよりも、殺気と云わなければならないだろう。
だがこういう殺気の場を、一向無関心に横目に見て、一人働かない人物があった。他ならぬ片足の吉
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