されたのは一筋の槍だ。
 いうところの逆モーション。かわすところを反対に、前へ飛び出した小一郎は、これもあくまで逆モーション、刀を揮って払いもせず、千段巻を握ろうともせず、飛び込みざまの双手突き、ウンとばかりに突っ込んだ。
 悲鳴をあげたのは槍の持ち主で、槍を前方へ突き出したまま、しばらく堪えて立っていたが、やがてポロリと槍を落とすと、背後《うしろ》ざまに地に仆れた。
 もうこの頃には小一郎は、束《そく》に背後へ飛び返り、ふたたび太刀を下段に付け、「来やアがれーッ!」と構えたが「あッ」とその次の瞬間には、驚きの声を迸らせた。
 月夜に楕円形の抛物線《ほうぶつせん》を描き、蛇のようなものが翻然と、小一郎へ飛びかかって来たからである。
「残念! やられた! 鎖鎌だ!」
 叫んだ小一郎の声と共に、ガラガラという音がした。同時にピカッと何物か、閃めき飛んだものがある。

        三十五

 争闘の後の静けさよ! ただ声ばかりが聞こえて来る。
「一尺になった! 二尺になった!」
 それから少し間を置いて、
「三尺になるのも間もあるまい!」
 滝の落ちる音が聞こえて来る。これまでの音とは少
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