で、三組の同勢は、先へ先へと進んで行く。目差すは同じ場所である。すなわち山尼の居場所である。
 先へ先へと進んで行く。
 だが先は続かなかった。
 遙か向うに盆地が見え、そこに点々と幾個《いくつ》かの天幕が日を受けて白く見渡された。
 それこそ山尼の部落である。
 谷を作っている左右の山も、盆地に向かって傾斜をなし、盆地に到って尽きている。谷も盆地で尽きている。
 で自然の勢いとして、田安家の勢《ぜい》も一ツ橋家の勢も、そうして君江も小一郎も、盆地で一緒にならなければなるまい。
 そういう盆地の中央にある、一つの大きな天幕の中で、桔梗様と鯱丸とは話していた。
 桔梗様を守護する山尼の徒が、十数人残っているばかりで、その他の無数の山尼達は、秩父の山にはいなかった。昆虫館をさして馳せ去ったのである。
「大変寂しくなりました」
 こう云ったのは鯱丸である。
「ほんとにひっそり[#「ひっそり」に傍点]としましたことね」桔梗様は何んとなく物憂そうである。
 天幕の中へ日が射している。それが桔梗様の顔を照らし、鯱丸のぼんのくぼ[#「ぼんのくぼ」に傍点]を照らしている。
「どこへ行ったのでございましょうね?」
 鐘が谷の方で鳴り渡って、山尼の徒がそっちへ走って、そうしてそのまま大忙《おおいそが》しに、山を下って行ったことだけは、桔梗様にも解っていたが、その他のことは解らないのであった。
「わけの解らない連中なので、さあどこをさして行ったものやら」早熟《ませ》た口調で鯱丸が云う。
「ところで高蔵尼とおっしゃる方は、いいお方なのでございましょうね」
 芹沢の里の乱闘の際、突然高蔵尼に攫《さら》われて以来、そうしてこの土地へ来て以来、ただ親切にあつかわれるばかりで、高蔵尼という尼様の素性は、いまだに桔梗様には解らないのであった。
「口小言のうるさい婆さまで」鯱丸は依然として、口が悪い。「でも結構な婆様で」今度は鯱丸は褒めるのであった。
「それにしてもここの人達は、何をして生活《くら》しているのでしょう?」
 一月あまり住居してみたが、桔梗様には山尼の生活が、どうにも胸に落ちないのであった。毎朝毎晩看経をするのは、尼としては当然のことであったが、突然一同が打ち揃って、どこへともなく行くことがあった。托鉢に行くのだとも思われたが、そうでもないようなところもある。規律はいかにも整然としていて
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