乗ったものである。馬上でピッタリ男女の者が、縋るようにして抱き合ったが、キューッと、ひと[#「ひと」に傍点]締め![#「ひと[#「ひと」に傍点]締め!」は底本では「ひと締[#「と締」に傍点]め!」] 馬を締めた! タッタッタッ! タッタッタッ! 野花を蹴散らし砂塵を上げ、走る走る驀地《まっしぐら》!
怒りとそうして驚きとを、同時に感じたのが集五郎であった。小山の頂きに突っ立って、地団太を踏んだが及ばない、そこでグルリと振り返ったが、
「やあ方々一大事でござる、ご存知の一式小一郎が、山本氏と北条氏とを、切ってすてましてござります! 旅人の正体は小一郎、同じ方角へ向かうからは、我々と同じく山尼《やまあま》の居場所へ、訪ねて行くものと存ぜられます! 谷へ向かって馬を飛ばし、今や驀地《まっしぐら》に走って行きます! 追っかけなされ! 討って取りなされ! 谷を包囲し隙間もなく、探し探してお討ち取りなされ!」
こう呼び捨てると集五郎は、小一郎の後を追っかけて、一散に小山を馳せ下った。
そう呼びかけられて一ツ橋勢が、動揺したのは当然と云えよう。
華子の乗った山駕籠を、真ん中に包むと三十余人、同じく谷の方へ走り出したが、もうこの頃には一式小一郎は、谷の斜面の大岩の蔭に、君江と一緒に隠れていた。
四十九
「切り合いをするは容易《たやす》いが、他に大事な目的がある。敵は大勢こっちは一人だ。お前は女で用に立たぬ、怪我でもしては大変である。ああは大言は払ったもののうまく危難を遁がれたいものだ」
いささか心配だというように、小声で小一郎は話しかけた。
「思い付いたことがござます」こう云ったのは君江である。「鹿毛《かげ》を放すことにいたしましょう」
「ああ馬をか? ふうん、何故な」
「ごらんの通り木が繁って、谷間は暗うございます。しかもその木は大木ばかりで、馬が走って行きましても、恐らく姿は見えますまい」
「うむ、そうだな、それは見えまい」
「蹄の音は聞こえましょう」
「おおなるほど、それで解った。馬を走らせて蹄の音を聞かせ、一ツ橋家の武士どもを、迷わせようというのだな?」
「うまく行こうではございませんか」
「鹿毛は戻って来るだろうか?」
「云い聞かせることに致しましょう。きっと大丈夫でございますよ。利口な馬でございますもの」
大岩を巡って木立がある。二人の居
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