い敵が、その時その森の向う側を、まさしく歩いていたのであった。
 山駕籠に乗った冷泉華子を、南部集五郎とその一味とが、守護するように引き包み、話しながら辿っていたのであった。
 山駕籠の引き戸が開いている。華子がそこから覗いている。景色を眺めているのだろう。傍に引き添ったのは集五郎で、旅の装いを凝らしている。
 人数にして三十人あまり、同じ方角へ歩いて行く。
「はたして目付かるでございましょうか?」こう云ったのは集五郎であった。何んとなく不安な様子がある。
「たしかに目付かると思うがね」こう云ったのは華子であった。だがやっぱりどことなく、不安な様子を見せていた。「山尼の居場所を見付けるのは、大して困難ではないのだよ。目付けた後が困難なのさ。つまり取られた永生の蝶を、取り返すのが困難なのさ」
「ひどい目に逢ったというもので」こう云うと集五郎は苦笑をした。「やっと捕えた一匹の蝶を、横取りされたのでございますからな」
 すると今度は冷泉華子が、苦笑を口もとへ浮かべたが、「妾のニラミに狂いがなければ、永生の蝶を取られたより、桔梗という娘を取られた方が、お前さんにとっては苦痛のようで」
 これには集五郎も参ったようであった。
「率直に申せばその通りで、あれは残念でございましたよ。が、それにしても何用あって、永生の蝶や桔梗という娘を、あの不思議な山尼達は、横取って行ったのでございましょう」
「それは妾には解らないよ。……そうは云っても永生の蝶は、あれだけ名高いものではあり、それの秘密を剖《あば》いた者は、道教でいうところの寿福栄華を、一度に掴むことが出来るのだから、山尼の長《おさ》の高蔵尼《こうぞうに》が、欲しく思ったのは当然といえよう」
「その高蔵尼でございますが、あなた様や北王子妙子にとっては、どのような関係がございますので」集五郎にはこれが疑問らしかった。
「旧師匠なのだよ、私達のね。……これ以上は云われないよ。……一度あのお方に出られたが最後、妾にしてからが妙子さんにしてからが、それこそ手も足も出ないのだよ」
「ははあ」と云ったが集五郎には、腑に落ちないところがあるようであった。「それにしても奇観でございましたよ、あなた様の方へも行くことが出来ず、妙子の方へも行くことが出来ず、宙に舞っていた永生の蝶が、あの高蔵尼が現われるや否や、一気にそっち[#「そっち」に傍点]へ翔《
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