でございますよ」
「へい、しかし、三枚以上は……」
「では三枚お願いしましょう。……で、値段は? 一枚の?」
「二十五金ほどでございましょうか」
「では手附を、半分だけ」
「四十金? で……。これはどうも……へい、へい確にお預かりしました。……ええと所で、お住居は?」
「私、いただきに参ります」
「はい、左様で……。これは受取」
「いつ頃参ったら、ようございましょう?」
「さようでございますな……二三日ご猶予……」
「それではよろしく」
「かしこまりました」
で、女は店を出た。
怒ってしまったのは岡八である。
「馬鹿にしゃァがる! 一体何んだ!」心で毒吐いたものである。「みなり[#「みなり」に傍点]が悪いとこんな目に会う。百五十両だと吹っかけて置いて、二十五両だっていやあがる。ないといいながら三枚がところ、心あたりがあるというちきしょう[#「ちきしょう」に傍点]本当に張り倒してやるかな。……そうはいっても俺の手には、二十五両でも這入りそうも[#「這入りそうも」は底本では「遍入りそうも」]ないなあ。……それにしても一体あの女、何んで染吉の朱盆ばかり、そんなにも沢山ほしがるんだろう?」
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