べたような、白くて艶のある前歯が見え、その歯を蔽うている唇は、臙脂《べに》を塗ってはいなかったが、臙脂《べに》を塗っているよりも美しかった。練り絹の裾だけに、堂や塔や伽藍や、武器だの鳥獣だのの刺繍をしている、白の被衣《かつぎ》めいた長い布《きれ》を、頭からなだらかに冠っていた。異国織りらしい帯の前半《まえはん》へ、異国製らしい形をした、金銀や青貝をちりばめた、懐剣を一本差しているのが、この乙女を気高いものにしていた。
乙女を守護している娘達も、揃って美しく健康で、上品で無邪気ではあったけれども、被衣などは冠っていなかった。侍女達であることは云うまでもあるまい。
その一行が斜面を上って、丘の頂きへ立った時に、下から一斉に声を揃えて、呼びかける声が聞こえてきた。
――お嬢様ご用心なさりましょう。
――あまり遠くへおいでなさいますな。
――丹生川平の連中が、襲って参るかもしれませぬ。
距離がへだたっているがために、地言《じこと》はハッキリと解らなかったが、こういう意味のことを言っているようであった。
で、乙女も侍女達も、盆地の方を振り返って見た。往来や田畑や家の門口《かどぐち》
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