て、神を犯しマホメットを穢す! 嵐よ吹け! この者を倒せ! 豪雨よ降れ! この者を溺らせよ!」
 と、木や岩に反響して聞こえてくるのが、一層に凄くすさまじかった。
 思いも及ばなかった殺到に対して、いかに茅野雄が驚いたかは、説明をするにも及ばないであろう。
 身を翻えすと飛びしさって、そこにあった老木の杉の幹を楯に、引き抜いた刀を脇構えに構え、しばらく様子をうかがった。
 と云っても相手を見ることは出来ない。深山の暗夜であるからである。焔は消えたが余燼《よじん》はあって、五六本の松火が地上に赤く、点々とくすぶって[#「くすぶって」に傍点]はいたけれど、光は空間へは届いていなかった。案内の知れない山中であった。諸所に大岩や灌木の叢《くさむら》や、仆れ木や地割れがあることであろう。飛び出して行って叩っ切ろうとしても、躓《つまず》いて転がるのが精々であった。
(こ奴らは、一体何者なのであろう?)
 老人の祈りめいた叫び声によって、マホメット教徒であるらしい――そういうことだけは思われた。
(丹生川平の叔父の一族を、敵として憎んでいるらしいが、どういう理由から憎むのであろう?)
 すると不意に
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