まいかな? お城下へ通じている道である以上は、本街道と云わなければならない。本街道なら本街道らしく、たとえまれまれ[#「まれまれ」に傍点]であろうとも、人家が立っていなければならない)
 ところが人家は一軒もない。
(おかしいな、おかしい)
 しかし老樵夫がああ教えた以上は、やはり高山のお城下へ通う、本街道であるものと認めて、辿って行くべきが至当のようであった。
 で、茅野雄は歩いて行った。
 人間の不安や心配などに、なんの「時」が関わろうとしよう。間もなく夜となり夜が更けた。星の姿さえ見えないほどに樹木が厚く繁っている。で、四辺《あたり》が真の闇となり歩こうにも、歩くことが出来なくなった。
(いよいよ野宿ということになった。どうも仕方がない野宿をしよう)
 狼の襲来というようなことも、弦四郎の襲来というようなことも、もちろん心にはかかったけれども、それよりも山道を歩いて行って、断崖などを踏みそこなって、深い谿《たに》などへころがり落ちて、死んでしまうかもしれないという、そういう不安の方が茅野雄にとっては、緊急の不安であったので、野宿をすることに決心した。
(大岩の陰へでも寝ることにし
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