から。……不正な所へも現われるし、正しい所へも現われる。貧しい所へも現われれば、富んだところへも現われる。そうして「状態」をひっくり返す)
 露路口で立ち止まった碩寿翁は、こう考えて戦慄したが、そういう恐怖よりもさらに一層の、好奇心が胸へ湧き上った。で、手に持っていた包み物の、包みをグルグルと解きほぐし、現われた蒔絵《まきえ》の箱の蓋《ふた》を、月に向かってパッと取った。と一道の鯖《さば》色の光が、月の光を奪うばかりに、燦然としてほとばしり出たが、ほんの一瞬間に消えてしまった。碩寿翁が箱の蓋を冠《かぶ》せたからである。
「おおこの光に比べては、名誉も身分も、財産も生命《いのち》さえも劣って見える。……あれだ! たしかに! 探していたあれだ!」
 感動が著しかったためなのであろう、碩寿翁はガタガタと顫え出した。
 が、その次の瞬間に、碩寿翁を驚かせたものがあった。一本の腕が背後《うしろ》から延びて、蒔絵の箱を掴んだからである。
 とたんに活然と音がして、白い物が月光に躍り上り、すぐに地に落ちてころがった。
 抜き討ちに切りつけた碩寿翁の太刀に、御幣《ごへい》の柄が真ん中から二つに切られ、
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