と訊《たず》ねるのが本当ではあるが、ナーニ私は訊ねないよ。ちゃんと解っているからさ。掘り出し物がしたいからであろう。ここへ来るほどの人間は、一人残らず誰も彼もそうさ。アッハッハッ、図星だろうがな。ところでどういう掘り出し物を、お手前は望んでおられるやら? 実はな、私はそいつが聞きたい。が、押しては訊ねない、と云うのは推量がついているからよ。お手前の今の話によって、推量を私はつけたのだ。……亜剌比亜《アラビア》から渡って来た何かであろう。ここで率直に云うことにする。私もな、同じ物を探しているのだ」
戸外《そと》は夜で暗かったが、部屋の中は燈火で明るかった。一つの卓を前にして、その向こう側へ醍醐弦四郎を置いて、眼光の鋭い巨大な鷲鼻の、老将軍のような碩寿翁が、胡麻塩の頤髯を悠々と撫《ぶ》し、威厳のある声音《こわね》で急所々々を、ピタピタ抑えてまくし立てた様子は、爽快と云ってよいほどであった。
向かい合っている醍醐弦四郎も、一種剛強の人物らしく、太い眉に釣り上った眼、むっと結んだ厚手の唇、鉄のように張った胸板など、堂々とした風采ではあったが、碩寿翁にかかっては及ぶべくもないのか、たじろいだ
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