押したかのように、思わず前へ突き進んだ。
いつか茅野雄は石段を上り、神殿の前に立っていた。
と、茅野雄は腕を延ばしたが、グルグルと神像の首を捲いて、右手で刀の小柄《こづか》を抜くと、神像の眼をえぐりにかかった。
「あ、茅野雄様!」と恐怖に怯《おび》えた、浪江の声が聞こえて来た。しかし夢中の茅野雄の耳には、聞こえようとはしなかった。
浪江はそういう茅野雄を見ながら、体をこわばらして佇んでいたが、うっちゃっては置けないと思ったからであろう、石段を茅野雄の方へ走り上った。
「あまりに勿体のうございます!」
浪江は茅野雄の右の腕に縋《すが》った。
が、すぐに振りほどかれた。しかし浪江は一所懸命に、再度茅野雄の腕に縋った。が、またも振りほどかれた。
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しかしそういう夢中になっている、茅野雄の耳へ殺到して来る、大勢の足音や喚き声や、打ち物の烈しく触れ合う音が、聞こえてきたのは間もなくであった。
そうしてその次の瞬間には、宮川覚明と郷民達とが、石段の下まで襲って来たのを迎え、神殿を背後に神像の前に、抜き身を中段に構えた茅野雄が、その足もとに仆れている浪江の、気絶をしている体を置
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