お体はよろしいので?」
「いずれも微傷《うすで》ゆえ大丈夫でござる。……が、あのような経験は、拙者、一度で充分でござる」
「何と申し上げてよろしいやら」
「みんな弦四郎めが悪いので」
 二人は茅野雄《ちのお》と浪江《なみえ》とであった。
 と、背後《うしろ》から声がした。
「まあそう拙者を憎まないがよろしい。……大した悪人でもありませぬからな」

別天地

 丹生川平という別天地に、宮川茅野雄と醍醐《だいご》弦四郎とが、一緒に住居をしているとは、ちょっと不思議と云わなければならない。
 考えて見れば不思議ではなかった。
 茅野雄は丹生川平の長の、宮川覚明の甥であって、覚明の娘の浪江によって、招かれている人物であった。で、弦四郎や、丹生川平の、郷民達に襲われて、その幾人かを切って捨て、馬を奪って大森林を駈け抜け、丹生川平に辿りつくや、覚明をはじめ浪江によって、歓迎をされ無事を祝された。郷民を切ったことなども、間違いの結果であったので、郷民の方でも怨みとは思わず、かえって気の毒がり同情した。
 で、茅野雄は無事であった。
 弦四郎の方はどうかというに、彼の図々《ずうずう》しさと機智とによっ
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