る。こういうことを云っているのでござる。……アッハッハッ、変わった性質でな。……とは云えもはや飽き飽きしました。かような悪ふざけには飽き飽きしました。で、中止といたします。貴殿にもご中止なさるがよろしい」
訳の解らないことを云い出した。
これにはさすがの宮川茅野雄も、度胆を抜かれざるを得なかった。
(何という事だ! 何という武士だ!)
――で、茅野雄も後へ引いた。
とは云え茅野雄には弦四郎の態度や、云った言葉に合点の行かない、曖昧のところのあるのを感じて、油断をしようとはしなかった。
しかし弦四郎は暢気《のんき》そうに、刀を鞘へ納めてしまうと、両手を胸へ組んでしまって、ブラリブラリと歩き出した。
で、茅野雄も不審ながら、自分ばかりが物々しく、抜いた刀を持っていることが、不恰好のように思われて来た。
で、刀を鞘に納めた。
と、見て取った弦四郎は、一つニタリと含み笑いをしたが、
「高原の景色は美しゅうござるな」
こう云って四辺《あたり》を見るようにした。
「……」――しかし茅野雄は黙っていた。
「綺麗な草の花を茵《しとね》として、美しい婦人方が仆れております」
「さよう!
前へ
次へ
全200ページ中126ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング